新規たんぱく素材はなぜ試食会から始まるのか|官能評価と受容性テスト

新規たんぱく素材はなぜ試食会から始まるのか|官能評価と受容性テスト

Protein hub編集部 編集部

アカデミア・研究
新規たんぱく素材はなぜ試食会から始まるのか|官能評価と受容性テスト

新規たんぱく素材の社会実装では、栄養価や環境負荷だけでなく、「食べ続けられる品質か」が初期段階の論点になる。大豆、エンドウ、微細藻類、発酵由来たんぱくなどは、素材として有望でも、風味、後味、色、食感が既存食品とずれることがある。そのため試食会は、単なる披露の場ではなく、商品化リスクを早期に把握する評価工程として設計する必要がある。

官能評価と受容性テストの違い

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官能評価とは、人の感覚を用いて、食品の味、におい、食感、外観などの性質を評価する方法である。ISO 5492:2008は、官能分析を感覚器官による製品評価に関わる用語体系として整理している[1]。

一方、受容性テストは、対象となる消費者がその食品をどの程度好むか、他の試作品や既存品と比べてどう評価するかを見る試験である。ISO 11136:2014では、管理された環境で、消費者が製品をどの程度好むか、または相対的にどの程度好むかを測定する方法が扱われている[2]。

官能評価は「どんな特徴があるか」を分解する工程、受容性テストは「受け入れられそうか」を見る工程である。両者を分けることで、研究開発、品質保証、マーケティングの議論を整理しやすくなる。

代替たんぱくは味と食感で評価が分かれる

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代替たんぱく素材は、たんぱく質量だけでは評価しきれない。植物性の肉、乳、魚、卵代替品に関する2023年のシステマティックレビューでは、肉代替品13件、乳代替品26件、魚・卵代替品2件の研究が整理され、動物性原料を植物性原料に置き換えることで、外観、におい、味、食感のすべてが影響を受けると報告されている[3]。

特にBtoBの商品開発では、試食会や官能評価の結果が、原料ブレンド、香味設計、食感改良などの処方見直しに使われることがある。食品業界の新製品開発に関する2021年の調査では、EIT Regional Innovation Scheme対象国の食品企業関係者122名を対象に、官能評価の活用状況が調べられ、約70%の企業が新製品開発で官能評価を用いていると報告されている[5]。この結果を日本市場全体にそのまま広げることはできないが、官能評価が開発実務に組み込まれていることを示す参考材料になる。

注意点:試食会の結果を市場全体に広げすぎない

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試食会の結果は、設計次第で変わる。参加者が社内関係者に偏る、試食温度が一定でない、ブランド名を見せる、比較対象が不適切である、といった条件では、評価結果を読み違える可能性がある。

また、ISO 6658:2017は官能分析の方法論に関する一般的な手引であり、試験の選択、評価者の選定、試験材料、試験室、試験計画などの項目を含む[4]。官能評価は「食べたときの反応」を見る手段であり、安全性、アレルゲン、栄養成分、表示適合性を確認する工程ではない。新規たんぱく素材を商品化する場合は、試食評価とあわせて、品質保証、法規制、製造適性を別工程で確認する必要がある。

試食会は研究を商品に翻訳する入口である

新規たんぱく素材が試食会から始まるのは、味、食感、におい、見た目が社会実装のボトルネックになりやすいからである。官能評価で特徴を分解し、受容性テストで消費者の評価を確かめる。両者の役割を分けて設計できれば、研究成果を「使える素材」から「選ばれる食品」へ近づけやすくなる。 

BtoBの現場では、試食会をイベントとして扱うのではなく、処方設計、用途開発、顧客提案の精度を高めるための評価データ取得の場として位置づけることが重要である。5f91fe687f3c4e129e323d5a5f1ac325.png

参考文献

[1] ISO. ISO 5492:2008 Sensory analysis — Vocabulary.

URL: https://www.iso.org/standard/38051.html

確認日:2026年6月8日

[2] ISO. ISO 11136:2014 Sensory analysis — Methodology — General guidance for conducting hedonic tests with consumers in a controlled area.

URL: https://www.iso.org/standard/50125.html

確認日:2026年6月8日

[3] Appiani M, Cattaneo C, Laureati M. Sensory properties and consumer acceptance of plant-based meat, dairy, fish and eggs analogs: a systematic review. Frontiers in Sustainable Food Systems. 2023.

URL: https://www.frontiersin.org/journals/sustainable-food-systems/articles/10.3389/fsufs.2023.1268068/full

確認日:2026年6月8日

[4] ISO. ISO 6658:2017 Sensory analysis — Methodology — General guidance.

URL: https://www.iso.org/standard/65519.html

確認日:2026年6月8日

[5] Świąder K, Marczewska M. Trends of Using Sensory Evaluation in New Product Development in the Food Industry in Countries That Belong to the EIT Regional Innovation Scheme. Foods. 2021;10(2):446.

URL: https://www.mdpi.com/2304-8158/10/2/446

確認日:2026年6月8日