
健康意識の高まりとともに、プロテイン市場では「無添加」や「甘味料不使用」を謳う商品への注目が集まっています。一方で、消費者の間には「甘味料を減らすと、プロテイン特有の風味が際立って飲みにくくなるのではないか?」という疑問も根強く存在します。
結論から言えば、甘味料を減らすことは必ずしも「飲みにくさ」には直結しません。むしろ現在の無添加・フリー表示のトレンドは、プロテインを機能的なサプリメントから「日常的な食品」へと昇華させる重要な転換点となっています。本記事では、この市場の変化を「甘味」「後味」「継続性」の3つの構造から解説します。
甘味:WHOの提言と「甘さの質」に対する価値観の変化

プロテインの主原料であるホエイ(乳清)やソイ(大豆)には、本来特有の匂いや苦味、えぐみがあります。これをマスキング(覆い隠す)し、かつカロリーを抑えるために、多くのプロテインにはスクラロースやアスパルテームなどの「非糖質系甘味料(NSS)」が使用されてきました。
しかし、2023年5月に世界保健機関(WHO)は、「非糖質系甘味料(NSS)の長期的な使用は体重コントロールに有効ではなく、2型糖尿病や心血管疾患などのリスクを上昇させる可能性がある」とする新たなガイドラインを発表しました[1]。
この国際的な勧告は、消費者の「甘くてもカロリーゼロなら良い」という認識を、「甘さの強さや後味に納得感のあるものを選びたい」という意識へ変化させています。甘味料を減らしたプロテインは、従来の「ガツンとした強い甘み」を持たないため、飲み始めは物足りなさを感じるかもしれませんが、それは「飲みにくさ」ではなく「素材本来の味への適応」だと言えます。
後味:消費者庁ガイドラインが促す「ごまかしのない風味」

プロテインを飲んだ後に口に残る、特有のベタつきや強い甘みを不快に感じる人は少なくありません。これは、高甘味度甘味料が持つ独特の「後残り」が原因であることが多いです。甘味料を減らす、あるいはステビアなどの植物由来に切り替えることで、この「後味」は後味がすっきり感じられる場合があります。
また、toB(メーカー・販売者)側の環境にも大きな変化がありました。2022年3月に公表され、2024年3月末に表示の見直し期間が終了した「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」です[2]。これにより、単なる「無添加」表示や、食品表示基準に規定されていない用語を用いた表示について、事業者側の点検がより重要になりました。
このルールの厳格化により、メーカー側は「無添加」という言葉のマーケティング効果だけに頼ることができなくなりました。その結果、香料や強い甘味料で風味をごまかすのではなく、たんぱく質原料そのものの精製度を上げ、本当に後味が良く美味しいプロテインを開発するという、本質的な品質向上のサイクルが市場に生まれています。
継続性:日常的な栄養補給としての「飽きなさ」

プロテイン(たんぱく質)の摂取において最も重要なのは「継続性」です。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」においても、たんぱく質は生命活動を維持するための主要な構成要素として、毎日の十分な摂取が推奨されています[3]。
ハードなトレーニング直後のご褒美として飲むのであれば、お菓子のような強い甘みを持つプロテインが好まれるかもしれません。しかし、朝食の一部として、あるいは就寝前の栄養補給として「毎日飲む」ことを前提とした場合、甘すぎる味付けは徐々に「飽き」や「胃もたれ」の原因となります。
甘味料を抑えたプロテインは、後味がすっきりしているため水のように飲みやすく、また牛乳やオーツミルク、スムージーなどと混ぜても味が喧嘩しません。つまり、甘味料を減らすことは、一時的な嗜好性を下げる代わりに、毎日の生活に自然に溶け込む「継続しやすさにつながる可能性があります」結果をもたらしているのです。
まとめ
「甘味料を減らすとプロテインは飲みにくくなるのか」という問いに対する答えは、消費者の目的によって異なります。「お菓子のような強い甘味」を求める人には物足りなく感じるかもしれませんが、WHOの提言や消費者庁のガイドライン厳格化といった通り、市場では「表示の透明性」と自然な風味を重視する流れが見られます。
甘味料を減らすことで得られる「すっきりとした後味」と「飽きのこない継続性」は、プロテインを真の健康食品として日常に取り入れるための、最も合理的な進化だと言えるでしょう。

参考文献
[1] 世界保健機関(WHO) "WHO advises not to use non-sugar sweeteners for weight control in newly released guideline" 2023/5/15
[2] 消費者庁 「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」 2023/3/30
[3] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書