
植物性たんぱく質(プラントベースプロテイン)を製品化する際、特有の青臭さや土っぽさといった後味(オフフレーバー)が課題になりやすい。本記事では、大豆(ソイ)、エンドウ豆(ピー)、米(ライス)の3種のたんぱく質において、なぜ異味・異臭が発生するのかを食品科学の視点から解説する。
植物性たんぱく質のオフフレーバーの根本原因

植物性たんぱく質における特有の風味や後味は、主に植物材料に含まれる不飽和脂肪酸が酸化・分解される過程で生成される揮発性化合物に起因している [1]。たんぱく質の抽出・加工・保存の段階で酵素的、または非酵素的な反応が進行し、アルデヒド類、アルコール類、ケトン類といった低分子化合物が生成される [1]。これらが『青草』や『豆』と表現されるオフフレーバーの要因であることが報告されている[2]。また、これらの揮発性化合物はたんぱく質と疎水性相互作用によって非共有結合しやすいため、風味の放出が変化し、後味に影響を与える可能性があることが示唆されている[3]。
大豆・ピー(エンドウ豆)における「豆くささ」のメカニズム

大豆たんぱく質およびピーたんぱく質のオフフレーバーは、主にリポキシゲナーゼ(脂質酸化酵素)の働きによる不飽和脂肪酸の酸化分解から生じる [1]。この経路で生成される代表的な化合物がヘキサナール(Hexanal)などのアルデヒド類であり、これが強い「青草様」や「脂肪様」の豆くささをもたらす [1]。
ピーたんぱく質の場合、エンドウ豆に由来するメトキシピラジン類などの化合物が、土っぽさや豆の風味に寄与していることが報告されており、風味の複雑さを増す要因となっている[4]。これらの物質は低濃度でも風味に影響を与える可能性があるため、製品の風味設計において課題となりやすい。
ライス(米)たんぱく質の特有の風味と課題

ライスたんぱく質は、大豆やピーと比較すると全体的な風味がニュートラルであるとされるが、完全に無味無臭ではない。ライスたんぱく質特有のオフフレーバーの原因物質としては、アルコール類の一種である1-ヘキサノール(1-hexanol)が挙げられる [1]。
1-ヘキサノールは、でんぷん質由来の甘い青草のような香りや、シリアル(穀物)特有の風味を製品に付与する [1]。大豆やピーほどの強いえぐみはないものの、プレーンな飲料やデリケートな風味の一般食品に配合した場合、この穀物臭がマスキングの妨げになる場合がある [1]。
商品開発における後味改善のアプローチ
植物性たんぱく質の後味を改善するには、香料で不快な匂いを覆い隠す(マスキング)だけでは十分でない場合がある。たんぱく質に結合した揮発性化合物が後味として浮き出てしまうためである。近年では、乳酸菌などの微生物を用いた多段階発酵技術により、原因となるアルデヒド類やフラン類をアルコールや有機酸に変換し、特定の試験条件下で、主要な臭気成分を90%以上低減した手法も報告されている [1]。商品開発においては、各原料特有の原因物質を特定し、食品科学の知見に基づく加工技術を選択することが品質向上の鍵となる。

参考文献
[1] MDPI「Controlling Off-Odors in Plant Proteins Using Sequential Fermentation」 URL: https://www.mdpi.com/2304-8158/15/1/39 確認日: 2026年6月26日
[2]Rapid Acidification and Off-Flavor Reduction of Pea Protein by Fermentation with Lactic Acid Bacteria and Yeasts (PubMed Central)
URL:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10888418/
確認日: 2026年6月26日
[3]Understanding protein–flavor interactions: Factors, characterization techniques, and the effect of processing (IADNS)
URL:https://iadns.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/fob2.70039
確認日: 2026年6月26日
[4]Aroma, Flavor, and Textural Drivers of Acceptance in Unflavored Pea Protein Isolates (PubMed Central)
URL: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12902806/
確認日: 2026年6月26日