
コスト構造:「生産量が少ないから」では片付かない

粉末プロテインのOEMにおいて、小ロット発注時の製品単価が高い理由は、単に「規模の経済が働かないから」に留まらない。プロテイン製造は、原料手配の物理的制約、設備稼働率を圧迫するサニテーション、そして法定表示を伴う包材の特殊性という3要因によって固定費が積み上がる構造である。原価の内訳を俯瞰し、小ロットOEMが割高になる理由と回避策を解説する。
原料調達と「最低ロット」の壁

原料メーカーが設定する最低受注数量と配合のミスマッチが、コストを押し上げる大きな要因だ。
WPCや大豆たんぱくなどの主原料は、一般的に20kg単位のクラフト紙袋等で取引される。例えば100kgの小ロット製造を行う場合、主原料は使い切れるが、数%のみ配合する香料、甘味料、ビタミンミックスなどの副原料は余剰となる。
余剰原料は保管スペースを圧迫し、品質劣化のリスクを伴う。公益財団法人日本健康・栄養食品協会の適正製造規範では、原料の受入れから最終製品の出荷に至る全工程で厳密な品質管理を求めている[1]。開封後の副原料を長期間保管して次回の製造に回すことは、吸湿や微生物汚染のリスクを伴うので、小ロット案件では余剰原料の廃棄や保管コストといったロスを製品単価に上乗せせざるを得ないのだ。
粉体ラインのサニテーションによる稼働率低下

ラインの切替作業のようなサニテーションに伴うタイムロスも、製造コストを圧迫する。
粉末製品は機器や配管に残留しやすく、別製品の製造に移る際のクロスコンタミネーション防止が重要になる。厚生労働省のウェブサイトで公開されている日本健康・栄養食品協会作成の「健康食品製造におけるHACCP導入手引書」では、化学的危害要因の対策として、製造機器の洗浄不足による交差汚染や環境汚染のリスク管理が求められている[2]。
これらを同一ラインで切り替えて製造する場合、微量のアレルゲン混入を抑えるため、十分な洗浄や検査体制が必要になる場合がある。
この洗浄・乾燥工程は、工場や製品によっては半日〜1日程度を要する場合がある。工場側から見れば、1トンの製造でも100kgの製造でも、前後の清掃や排水処理、空調による換気にかかるダウンタイムは変わらない。つまり小ロット製造は設備の稼働率を著しく下げることになり、結果としてライン占有費が増加するのである。
包材費と表示ラベルの印刷・手作業コスト

包材の調達と法定表示ラベルの制約も、単価に関係する。
量産品で使われるグラビア印刷のアルミパウチは、数千メートル単位でのフィルム製造となるため小ロットには対応できない。結果として、既製品の無地アルミ袋にシールを貼る運用となる。
その際、食品表示法に基づき、パッケージの表示可能面積に応じて原則8ポイント以上の活字で一括表示を記載する必要がある[4]。この法令に準拠したラベルを、製造ラインの従業員が1袋ずつ手作業で正確な位置に貼り付ける工程が発生する。資材費自体は抑えられても、充填・梱包工程における人件費が積み上がり、最終単価を押し上げる構造だ。
小ロットOEMを成立させるための設計
事業者が小ロットで利益を出すには、製造工場の「手間」を省く処方設計が有効だ。
工場がストックしている標準的なプロテインベースを活用し、香料のみを後添加する手法や、パッケージの共通化を図ることで、余剰原料の廃棄リスクとライン切替時間の短縮を図れる。自社の独自性を追求する成分と、工場の生産性を高める標準化の妥協点を探ることが、小ロットOEMを成立させる重要な条件となりうる。

参考文献
[1] 公益財団法人 日本健康・栄養食品協会. GMPとは.
URL: https://www.jhnfa.org/gmp-0.html
確認日:2026年7月7日
[2] 厚生労働省. 健康食品製造におけるHACCP導入手引書.
URL: https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/001001434.pdf
確認日:2026年7月7日
[3] 消費者庁. 食物アレルギー表示に関する情報.
URL: https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/
確認日:2026年7月7日
[4] 消費者庁. 食品表示ガイド.
確認日:2026年7月7日