
結論から述べる。自社のプロテイン商品をSNSやインフルエンサーを通じてPRする際、事業者(ブランドオーナー)は景品表示法に基づくステルスマーケティング(ステマ)規制に厳格に対応する必要がある。2023年10月1日より、ステマは景品表示法上の「不当表示」として明確な規制対象となった[1]。 最も注意すべき点は、法令違反時の行政処分(措置命令等)の対象が、情報発信者であるインフルエンサーではなく、商品を提供する事業者のみに限定されていることである。本記事では、D2Cプロテインブランドが第三者に商品紹介を依頼する際に遵守すべき法的な責任と、現場で直ちに使用できる具体的な関係性明示のルールを解説する。
景品表示法に基づくステマ規制の対象と法的責任

事業者の表示を判別困難にする行為の禁止 ステマ規制の核心は、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の禁止である。事業者がインフルエンサーやアフィリエイターに商品の無償提供や金銭的な報酬を支払い、SNSやブログでの紹介を依頼した場合、その投稿は第三者の純粋な感想ではなく「事業者の表示(広告)」に該当する。 消費者は、中立的な第三者の口コミであると誤認してプロテイン製品を購入するリスクがあるため、事業者の関与がある場合は広告であることを明瞭に記載する義務が生じる[1]。
インフルエンサー個人の感想と事業者の表示の境界線 事業者が全く関与せず、インフルエンサーが自費でプロテインを購入し、自主的に発信した投稿は規制の対象外である。しかし、事業者が商品の特徴や投稿時期を指定したり、事前に内容の検閲を行ったりした場合は事業者の表示とみなされる。情報発信の主体が誰にあるのか(客観的な決定権がどちらにあるか)が、法的な境界線となる。
SNSプロモーションやサンプリング時の遵守事項

インフルエンサー投稿における事業者関与の明示 事業者が第三者に依頼して商品を紹介させる場合、「PR」「タイアップ」「プロモーション」といった文言を用い、事業者の表示であることを消費者に分かりやすく伝えなければならない。 プロテインは日常的に消費される食品であり、SNSでの口コミが購買行動に直結しやすい商材である。「インフルエンサーの自主的な愛用品に見せかける」「契約関係を伏せて好意的なレビューを指示する」といった行為は、景品表示法違反と判断されるおそれがある。
ギフティング(無償提供)における心理的影響と管理責任 D2Cブランドで頻繁に行われる「ギフティング(商品の無償提供)」にも細心の注意が必要である。「もし気に入ったら投稿してください」という任意の依頼であっても、過去の取引関係や今後の関係性(継続的なアンバサダー契約の示唆など)から、インフルエンサー側が「投稿しなければならない」と心理的なプレッシャーを感じる状況であれば、実質的な事業者の表示と判断されるケースがある[1]。 事業者は、商品の提供や投稿を依頼する際、「必ずPRであることを明記する」という条件をガイドラインとして提示し、投稿後の確認体制を構築する責任がある。
媒体別の関係性明示ルールと具体的な記載箇所

ハッシュタグの選定と視認性の高い配置基準 実務において最も重要なのは、関係性の明示方法である。消費者庁の運用基準によれば、事業者の表示であることは「明瞭に」記載されなければならない。 プロテインブランドが規定すべき具体的なルールは以下の通りである。
-
「#PR」「#プロモーション」「#[ブランド名]提供」などの明確な文言を使用する。
-
文章の末尾や大量のハッシュタグの中に埋もれさせるのではなく、消費者が認識しやすい位置(SNS投稿の冒頭やファーストビュー)に配置する。
-
動画コンテンツ(YouTubeやTikTok等)の場合は、動画全体を通して広告であることが明瞭に伝わるよう、画面表示や発言の方法を設計する。
「アンバサダーを務めています」「応援しています」といった曖昧な表現のみでは、事業者の広告表示であることが消費者に正しく伝わらないと判断される可能性が高いため、単独での使用は禁止すべきである[1]。
規制遵守によるプロテインブランドの信頼性構築
プロテインPRにおけるステマ規制への対応は、単なる法令遵守にとどまらず、ブランドの透明性と信頼性を担保するための最優先事項である。インフルエンサーへの依頼やサンプリングを実施する際は、事業者関与の明示をルール化し、運用を徹底することが求められる。 正しいルールの下でPR活動を行い、消費者に対して誠実な情報開示を継続することが、結果として熱量のあるファンを獲得し、長期的なブランド構築へとつながるのである。

参考文献
[発行元(著者名): 消費者庁
資料名(タイトル): 令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。
URL: https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/
確認日: {2026年7月6日}
消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」