
プロテインを飲むと、「腎臓や肝臓に負担がかかるのでは」と不安になる人は少なくありません。腎臓病・肝臓病などを指摘されていない人が、食事で足りないたんぱく質を補う範囲で使う場合、ただちに腎臓や肝臓へ悪影響が出るとは考えにくいです。
一方で、腎臓病・肝臓病を指摘されている人や、健診でeGFR、クレアチニン、尿たんぱく、AST、ALT、γ-GTP(γ-GT)などの異常がある人は、自己判断で量を増やさないことが大切です[2][3][4]。
定義・基本:プロテインは「たんぱく質を補う食品」

一般的なプロテイン製品は医薬品ではなく、たんぱく質を手軽に補うための食品として利用されています。 たんぱく質は、20種類のL-アミノ酸がつながった栄養素で、体の構成成分の一つとして使われます。酵素、ホルモン、抗体、物質輸送などにも関わる栄養素です[1]。
たんぱく質は体内で分解されてアミノ酸となり、一部は代謝の過程で尿素などとして体外へ失われます[1]。肝臓は、たんぱく質の分解などで生じるアンモニアを尿素へ変える働きに関わり、尿素は最終的に腎臓から尿として排出されます[7]。また、腎臓は血液をろ過して尿を作り、クレアチニンなどの老廃物を尿中に排出する働きがあります[2]。
つまり、腎臓と肝臓はどちらも「たんぱく質を体内で使った後の処理」に関係する臓器です。
なぜ使われるか・なぜ重要か

プロテインが使われる理由は、食事だけで必要なたんぱく質を整えにくい場面があるためです。朝食が軽くなりやすい人、運動後に手早く補給したい人、食が細い人にとっては、食事を補う選択肢になります。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、19歳以上のたんぱく質維持必要量の平均値として0.66g/kg体重/日が示されています[1]。ただし、必要量は体格、年齢、活動量、食事内容、健康状態によって変わります。
そのため、プロテインは「多く飲むほどよいもの」と考えない方がよいでしょう。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などから摂る分も含めて、1日のたんぱく質総量で見ることが大切です。
注意点:腎臓・肝臓に不安がある人は個別判断が必要

腎機能が低下している人では、たんぱく質量を調整することがあります。National Kidney Foundationは、腎臓病ではたんぱく質由来の老廃物を処理しにくくなる場合があり、透析をしていない人では控えめにする考え方がある一方、透析中は必要量が増えると説明しています[5]。
つまり、腎臓病の人にとって「少なければよい」「多く摂ればよい」と単純には言えません。必要量は腎機能、栄養状態、透析の有無などで変わります。
肝臓についても同じです。AST、ALT、γ-GTPは肝機能検査に含まれる項目です。厚生労働省資料では、AST・ALTは肝臓の細胞が壊れると上昇し、γ-GTPは飲酒や肥満で上昇することがあると説明されています[3][4]。
一方で、肝疾患の栄養管理では、低栄養や筋肉量の低下も問題になります。ESPENの肝疾患栄養ガイドラインでは、肝硬変患者の栄養状態に応じたたんぱく質摂取が扱われ、肝性脳症がある場合でも一律のたんぱく質制限は推奨されていません[6]。
そのため、健診で数値異常を指摘された人、治療中の人、医師から食事制限を受けている人は、プロテインの種類や量を自己判断で増やさない方が安心です。始める前に、医師や管理栄養士へ相談しましょう。
まとめ:心配なときは「量」と「検査値」を確認する
プロテインと腎臓・肝臓の関係は、「飲むと悪い」「飲めば安心」と分けられるものではありません。健康な人が不足分を補う範囲で使う場合と、腎機能・肝機能に不安がある場合では、注意点が変わります。
確認したいのは、普段の食事からどれくらいたんぱく質を摂っているか、プロテインで何g追加しているか、そして健診結果に異常がないかです。
eGFR、クレアチニン、尿たんぱく、AST、ALT、γ-GTP(γ-GT)などに異常がある場合や、腎臓病・肝臓病の治療中の場合は、摂取量を増やす前に専門家へ相談してください。

参考文献
[1] 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版)「たんぱく質の食事摂取基準」.
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316462.pdf
確認日:2026年6月8日
[2] 厚生労働省. 労働安全衛生法に基づく一般健康診断への血清クレアチニン値の追加に関する要望に関して.
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001596747.pdf
確認日:2026年6月8日
[3] 厚生労働省. 肝機能検査について.
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001597861.pdf
確認日:2026年6月8日
[4] 厚生労働省. 事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン 参考資料「肝疾患に関する留意事項」.
確認日:2026年6月8日
[5] National Kidney Foundation. CKD Diet: How much protein is the right amount?
URL:https://www.kidney.org/kidney-topics/ckd-diet-how-much-protein-right-amount
確認日:2026年6月8日
[6] ESPEN. ESPEN practical guideline: Clinical nutrition in liver disease.
確認日:2026年6月8日
[7] Barmore W, Stone WL. Physiology, Urea Cycle. StatPearls. NCBI Bookshelf.
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK513323/
確認日:2026年6月8日