
ホエイたんぱくは、チーズやカゼインなどを作る過程で、「乳清(ホエイ)」をろ過・濃縮・乾燥して作られる原料です。
この記事では、乳清がどのようにWPC、WPI、WPHといったプロテイン原料になるのかを紹介します。生活者にとっては、プロテインの価格や飲みやすさの違いを理解する入口になります。事業者にとっては、原料選定、OEM先との確認、営業資料で製造背景を説明する際の視点になります。
ホエイはチーズづくりの液体部分から生まれる

では、「乳清(ホエイ)」とはなんでしょうか。日本では「ホエイ」の方が浸透しているため、以降はこちらで表記を統一します。
ホエイとは、チーズやカゼインなどの製造時に、凝固した乳成分から分離される液体部分です。Codexのホエイパウダー規格でも、ホエイは乳を凝固させた後にカードから分離される液状の乳製品として説明されています[1]。
この時点のホエイには、ホエイたんぱくだけでなく、乳糖、ミネラル、水分なども多く含まれています。つまり、ホエイを乾燥させただけでは、高たんぱくプロテインになるわけではありません。 プロテイン原料として使いやすくするには、「たんぱく質以外の成分をどこまで取り除くか、どの程度まで濃縮するか」が重要になります。
ここが、WPCとWPIの違いにもつながります。見た目は同じ白い粉でも、原料の中身は製造工程で大きく変わります。
ホエイからWPC・WPIへ:分離と乾燥

一般的には、ホエイはまず脂肪分やカードの微細な残りを取り除き、必要に応じて冷却・殺菌されます。高品質なスポーツニュートリション用途であれば、脂肪分や微粒子を除いた後に殺菌を行う管理が推奨される場合もあります[2]。
次に中心となるのが膜ろ過です。代表的なのは、限外ろ過、ナノろ過、逆浸透などの膜分離技術です。限外ろ過では、たんぱく質を多く含む側を残し、水分、乳糖、ミネラルなどを多く含む側を通過させます。Tetra Pakの解説では、WPCはホエイを限外ろ過した保持液を乾燥して作られ、商用品ではWPC35〜WPC80のような区分が見られます[2]。
濃縮後は、蒸発濃縮や噴霧乾燥によって粉末化されます。噴霧乾燥は、液体を細かい霧状にして熱風で乾かす方法です。粉体原料として流通させるには、水分、溶解性、焦げ粒、微生物規格、袋詰め後の吸湿対策まで管理対象になります。プロテイン粉末の品質は、ろ過だけでなく、乾燥と保管まで含めて決まると考えると分かりやすいでしょう。
WPC・WPIの違い:「どこまで加工したか」

WPCは、ホエイからたんぱく質以外の成分を一部取り除いた濃縮原料です。ADPIの規格では、「WPCは完成乾燥品でたんぱく質25%以上となるよう、膜ろ過などの物理的分離技術で作られる」とされています。商業的にはWPC34やWPC80がよく見られます[3]。
WPIは、さらに非たんぱく成分を取り除いた原料です。ADPIでは、「WPIは乾物基準でたんぱく質90%以上となるよう、膜ろ過やイオン交換などで作られる」と説明されています[4]。そのため、同じ量の粉末でもたんぱく質含有率を高めやすく、乳糖や脂質を抑えたい設計で使われやすい原料です。
「タンパク質の多さ」だけで考えるとWPIが優れて見えますが、実際にはそれぞれで苦味、価格、溶解性、用途適性が変わるため、商品設計に合わせて選ぶ必要があります。
Tips:WPH
WPCやWPIをさらに酵素などで分解した「WPH」という原料もあります[5]。 ただし、ホエイからホエイたんぱく原料を作る基本工程を理解するうえでは、WPCとWPIの違いを押さえることが中心になります。WPHは、「基本原料からさらに加工した派生的な原料」として位置づけるとよいでしょう。
品質と表示で差が出る:原料メーカー・OEMが確認したい点

toBの実務では、「WPCかWPIか」だけでなく、規格書で何を確認するかが重要です。
たとえば:
たんぱく質含有率が「乾物基準」か「製品自体の値」か
水分
乳糖
脂質
灰分
微生物規格
溶解性
ロット差
原産国
アレルゲン表示
保管条件
などです。
国内で商品化する場合は、HACCPに沿った衛生管理や、乳製品関連の手引書も確認対象になります。厚生労働省は、食品製造事業者向けにHACCP導入のための手引書を公開しており、乳・乳製品編も掲載しています[6]。
また、ホエイ由来原料は乳に由来するため、容器包装された加工食品ではアレルギー表示の確認が欠かせません。消費者庁は、食物アレルギー表示について、特定原材料を含む旨の表示を義務付ける情報を公開しています[7]。
生活者向けには、「WPIだから必ず良い」ではなく、乳糖への耐性、価格、味、たんぱく質量、原材料名を見る視点を伝えると親切です。事業者向けには、ろ過方式、粉体化、衛生管理、ロット試験の説明が営業フックになります。製造背景を言語化できるブランドほど、単なる「高たんぱく」ではなく、原料設計の納得感を届けやすくなります。
まとめると、ホエイたんぱくは乳清を出発点に、分離、濃縮、乾燥、必要に応じた加水分解を経て作られます。プロテイン原料を見るときは、完成品のたんぱく質量だけでなく、どの乳清を、どの工程で、どの規格まで仕上げているかを見ることが大切です。

参考文献
[1] Codex Alimentarius Commission「CODEX STANDARD FOR WHEY POWDERS(CXS 289-1995)」
URL:https://www.fao.org/input/download/standards/184/CXS_289e.pdf
確認日:2026年6月5日
[2] Tetra Pak「Dairy Processing Handbook:Milk and Whey Fractionation」
URL:https://dairyprocessinghandbook.tetrapak.com/chapter/milk-and-whey-fractionation
確認日:2026年6月5日
[3] American Dairy Products Institute「Whey Protein Concentrate Standard」
URL:https://adpi.org/ingredient-resources/whey-protein-concentrate/
確認日:2026年6月5日
[4] American Dairy Products Institute「WPI|Whey Protein Isolate」
URL:https://adpi.org/the-powerful-list-of-dairy-ingredients/wpi-whey-protein-isolate/
確認日:2026年6月5日
[5] American Dairy Products Institute「Whey Protein Hydrolysates(WPH)Definition」
URL:https://adpi.org/ingredient-resources/whey-protein-hydrolysates-definition/
確認日:2026年6月5日
[6] 厚生労働省「HACCP導入のための手引書」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000098735.html
確認日:2026年6月5日
[7] 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」
URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/
確認日:2026年6月5日