
異物混入は、食品工場にとって単なる品質不良にとどまらない。消費者からのクレーム、取引先への報告、製品回収、原因調査、再発防止策の見直しなど、発生後の対応が広範囲に及ぶ場合がある。金属片や硬質異物のように喫食時のけがにつながるおそれがあるものは、企業の信頼にも大きく影響する。
消費者庁掲載の厚生労働省報告資料でも、CLASS Iの主な事例として「異物(金属片等)の混入」が挙げられている[1]。 異物混入は、発生してから検査で見つけるだけでなく、原材料の受入、製造設備、作業者、清掃、包装、出荷前確認まで、工程全体でリスクを下げる視点が必要になる。
国際的な衛生管理手法であるHACCPでは、食品等事業者が食中毒菌汚染や異物混入などの危害要因を把握し、原材料の入荷から製品の出荷までの全工程で、それらを除去または低減するための重要工程を管理する手法であるとされている[2]。つまり、異物混入対策は最終検査だけで完結するものではない。
本記事では、異物混入対策で見直したい工程と設備を、「入口・中・出口」の3つに分けて整理する。設備導入だけでなく、点検、清掃、検査、記録まで含めて見直すことで、現場で実行しやすい対策につなげる。
異物混入対策は「入口・中・出口」で考える

異物混入は、製造ラインの最後だけで起きるものではない。原材料や包材に付着して持ち込まれる場合もあれば、製造中の設備破損、部品脱落、作業者由来の毛髪や持ち込み品、清掃具の破損などが原因になる場合もある。そのため、対策は「入ってくる前に確認する」「製造中に発生させない」「出荷前に検出する」の3段階で設計する必要がある。
厚生労働省の「食品への異物の混入防止について」では、異物混入防止のため、設備の補修、施設管理、防虫防そ、作業者の衛生管理、不要物の持ち込み防止などの取り組みが示されている[3]。これは、異物混入対策が検査機器だけでなく、施設・設備・人・運用を含む管理であることを示している。
まずは自社の工程を「入口・中・出口」に分け、どの段階で異物が入りやすいかを確認したい。
見直したい工程と設備のポイント

異物混入対策では、工程ごとにリスクと対策が異なる。すべてを細かく洗い出す前に、まずは次のように整理すると見直しやすい。
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区分 |
見直す工程 |
主なリスク |
見直したい設備・運用 |
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入口 |
原材料・包材の受け入れ |
包装破損、ほこり、虫の混入 |
受入検査、保管場所、保管ラック、防虫防鼠 |
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中 |
製造、加工、清掃、従業員 |
部品破損、毛髪、虫の繁殖 |
設備点検、照度、作業服、清掃手順 |
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出口 |
最終検査、出荷前確認 |
硬質異物、シール不良、ラベル不備 |
金属検出器、X線検査機、シール検査 |
入口では、原材料や包材の受入時点で異物を「持ち込まない」管理が重要になる。外装の破れ、汚れ、虫の付着などは後工程に影響する。粉体や乾物を扱う場合は、ふるい、選別、分級などの設備も検討対象になる。
中の工程では、設備や器具の破損、部品脱落、作業者由来の異物を見落としやすい。刃物、ベルト、清掃具などの日常で使用するものは、日常点検と交換基準を明確にしておきたい。食品添加物製造向けのHACCP手引書でも、硬質異物や金属片などの物理的危害要因への対策として、機械器具の日常点検や定期点検が挙げられている[4]。
出口では、金属検出機やX線検査機などによる検査が中心になる。ただし、検査機器を設置するだけでは不十分だ。包装破損、シール不良、ラベル不備など、製品品質や出荷判定に関わる確認もあわせて行う必要がある。
設備導入だけでなく、点検と記録まで見直す

異物混入対策では、設備を入れることが目的になりがちだ。しかし、実際には「誰が、いつ、何を、どの基準で確認するか」まで決めておく必要がある。つまり、点検と記録だ。
たとえば金属検出機での異物検査の場合、テストピースを通して排除機構と感度を確認する例が示されている[5]。また、確認日、確認者、製品名やロット番号、検査数量、基準から外れた製品の数量と対応を記録として保存する流れも示されている。
これは金属検出機に限った話ではない。設備点検、清掃、薬剤管理、防虫防鼠、従業員の入室ルールも、実施したかどうかを記録に残さなければ、問題発生時に原因を追いにくい。
異物が見つかった場合に重要なのは、「検出できたか」だけではない。どの工程で発生したのか、同じ原因が繰り返されていないか、設備や運用のどこを改善すべきかまで確認する必要がある。
設備会社、検査機器会社、衛生管理会社にとっては、ここに提案余地がある。単に機器を販売するのではなく、工程の見直し、点検ルール、記録方法、清掃や保守の運用まで含めて提案することで、現場の課題に入り込みやすくなる。
まとめ
異物混入対策は、最終検査だけで考えるものではない。原材料や包材を受け入れる入口、製造・加工を行う中の工程、包装・検査・出荷前確認を行う出口の3段階で見直す必要がある。入口では、受入検査や保管環境、防虫防鼠が重要になる。中の工程では、設備点検、部品脱落、作業者由来の異物、清掃具や薬剤管理を確認したい。出口では、金属検出機やX線検査機などの検査設備に加え、包装状態や検査記録の確認も欠かせない。
ただし、設備を導入すれば十分というわけではない。異物混入リスクを下げるには、点検基準、清掃手順、検査頻度、記録、異常時の対応まで含めて運用を設計する必要がある。
まずは自社工程を「入口・中・出口」に分け、どこで異物が入り、どこで発生し、どこで検出できるのかを確認する。そのうえで、必要な設備と運用を見直すことが、実効性のある異物混入対策につながる。

参考文献
[1]消費者庁 厚生労働省報告資料 2024/10/22
[2]厚生労働省 HACCPに沿った衛生管理の制度化について
URL : https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/index.html
[3]厚生労働省 食品への異物の混入防止について 2015/1/9
URL : https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000078252.pdf
[4]厚生労働省 食品添加物製造におけるHACCP導入の手引書(基準B)
URL : https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000193705.pdf
[5]一般社団法人 日本惣菜協会
小規模な総菜製造工場におけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書version 1.2