
危害要因分析とは、原材料および製造加工工程における潜在的な危害要因について、起こりやすさや、起こったときの健康被害がどの程度なのかを明らかにする。
そのうえで、各危害要因に対する管理方法を明らかにするものである。
危害要因分析とは

危害要因分析の定義や役割について説明する。
危害要因分析の定義と意味
危害要因は、最終製品を食べたときに健康に悪影響をもたらす可能性のある物質や食品の状態のことで、「ハザード」ともいう。
危害要因分析は、HACCP(Hazard Analysis Critical Control Point:危害分析及び重要管理点)の手順6(原則1)に該当する。
HACCPは、原材料の受け入れから製造、出荷までの全工程で危害要因を予測する。特に重要な工程(CCP)を連続的に監視することで、製品の安全性を確保しようとする、国際的に認められた衛生管理の手法である。
手順1~手順5によって危害要因分析をする準備を整え、手順6で危害要因分析を行う。手順6を踏むことで、手順7のCCP(Critical Control Point:重要管理点)の決定につながる。
危害要因分析の役割
危害要因を分析することで、HACCPにおいて特に重要な管理が必要な工程(CCP)の決定につなげることができる。
結果的に、健康に悪影響をもたらす可能性のある物質や食品を特定することができる。
危害要因分析(手順6)に向けた「5つに事前準備」

手順6の危害要因分析を正確に実施するためには、事前の情報整理が不可欠である。
まずは、分析の土台となるHACCPの手順1から手順5までの事前準備を進め、製品と工程に関する情報を網羅することが重要である。
手順1:HACCPチームの編成
まず、HACCP導入の第一歩としてHACCPチームの編成を行う。
原材料や製造方法、施設・設備の取扱いと保守・保全、原材料から製品・工程・消費に至るまでの品質管理・品質保証など、それぞれ実務に精通した人を選出する。
HACCPに関する専門的な知識を持った人がいない場合は、外部の専門家や専門書を参考にする。
チームリーダーは、コミュニケーション能力が高く、社内の意見をまとめられる人が適任であり、経営者への報告も役割になる。
手順2:製品説明書の作成
次に、扱う製品の性質を明確にする。製品の名称や種類、含まれるアレルゲン、製品規格、保存方法など、最終製品に関する情報を洗い出して、説明書を作成する。

出典:厚生労働省 食品製造におけるHACCPによる衛生管理普及のためのHACCPモデル例
手順3:意図とする用途及び対象となる消費者の確認
その製品の意図する用途や対象となる消費者の確認をする(どのように誰に食べられるかを確認する)。
・意図する用途
加熱して食べるのか、そのまま食べるのか、病院食で使用されるのかなど。
・対象となる消費者
一般消費者向けか、あるいは乳幼児向けやアレルゲンの配慮が必要な消費者など、その食品をどのような人が食べるのかなど。
これらを想定することで、製品の義務表示や、取扱い方法などの注意喚起表示といった必要な配慮も見えてくる。
手順4:製造工程一覧図(フローダイヤグラム)の作成
原材料の受入から製品の保管・出荷に至るまで、製造・加工のすべての工程を時系列で書き出す。各工程における温度や時間などの管理条件も記入する。

出典:厚生労働省 食品製造におけるHACCPによる衛生管理普及のためのHACCPモデル例
手順5:製造工程一覧図の現場確認
作成した製造工程一覧図が、実際の現場と一致しているかを検証する。
原料の入荷から出荷までの動線を実際に確認し、図面と現場に相違点があれば、必ず工程図を修正する。
危害要因分析の進め方とCCP(重要管理点)の決定

事前準備(手順1~5)で整理した製品と工程の情報をもとに、危害要因分析(手順6)とCCPの決定(手順7)を行う。
ここでは、「危害要因分析表」の各欄を順に埋めていく形で、実務の流れに沿って説明する。
下表の米を例にした危害要因分析表を参照しながら、以下を読み進めることを推奨する。
手順6:危害要因分析のステップ
まずは、準備した製造工程一覧図に沿って、1~4のステップでハザードを評価・整理する。
1. 工程の列挙(第1欄)
製造工程図の通りに、原材料や工程を工程番号順にすべて列挙する。
2. 潜在的なハザードの洗い出し(第2欄)
工程1から順に、原材料や工程に関連があると考えられる潜在的なハザードを、HACCPチームの経験や知識をもとにすべて列挙する。
このとき、以下の3つの視点を持って、製品情報や現場の状況からハザードを洗い出す。
・生物的危害要因:
食品の温度管理不足、原材料や中間加工品の不衛生な取り扱いによる微生物、ウイルス、寄生虫の繁殖、混入がある。
・化学的危害要因:
薬品類の管理不足で洗剤や殺菌剤の残存、気狂いの使いまわしによるアレルゲンのコンタミネーション、カビ毒や農薬などの混入がある。
・物理的危害要因:
蛍光灯破損によるガラス片、設備の摩耗による金属片、石、硬質プラスチックなどの異物混入がある。
この視点を持つことで、「どの原材料でハザードが発生しうるのか」「どの工程で混入・増殖・残存する可能性があるのか」を具体的に整理することが出来る。
3. 危害要因の重要性の判断と根拠(第3欄・第4欄)
第2欄で工程ごとに列挙されたハザードが重要である(HACCPプランで管理する必要があるハザード)か判断し、第3欄にYes(○)かNo(×)を記入する。
また、第4欄に判断した根拠を記入する(第3欄、第4欄を工程1から順に進める)。第3欄がYesとなった重要なハザードは、どこかの工程をCCPにして管理する必要がある。
4. 管理手段の整理(第5欄)
第3欄でYes(○)としたハザードについて、それをどのように抑え込むのかという管理手段(加熱、殺菌、冷却、検品など)を第5欄に記入する。(Noだった工程は、第4欄に根拠が記入されるので、第5欄への記入はしない。)
手順7:CCP(重要管理点)の決定
第5欄までの記入(ハザードと管理手段の整理)が完了したら、再び工程1に戻り、CCPの決定に移る。
5. CCP(重要管理点)の決定(第6欄)
第5欄に列挙した管理手段が、その工程で管理する必要があるのかを判断する。
もし、そのハザードを除去・低減できる工程が後工程に無い場合は、その工程がCCPとなる(第6欄をYesにする)。
逆に、後工程に確実な管理手段(下表では殺菌工程)がある場合は、その工程はCCPにはならない(第6欄をNoにする)。
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(1) |
(2) |
(3) |
(4) |
(5) |
(6) |
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原材料/工程 |
この原材料/工程に関連があると考えられる潜在的なハザードをすべて記載する |
この工程で、侵入、増大、除去される潜在的なハザードは重要か?(Yes/No) |
(3)欄の決定を下した根拠を記す |
(3)欄で重要と認められたハザードを予防、除去、低減するために適用できる管理手段は何か? |
この工程はCCPか?(Yes/No) |
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米 |
生物的:病原微生物の存在サルモネラ属菌、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌、病原性大腸菌、ボツリヌス菌、セレウス |
Yes |
畜産物であるため病原性微生物の存在の可能性ある |
後工程の21.殺菌工程で管理する |
No |
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生物的:寄生虫の存在マンソン裂頭条虫、イヌ・ネコ回虫 |
No |
すでに長期間凍結されているので死滅している |
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化学的:残留農薬の存在 |
No |
動物薬の使用を順守した原料を使用し、年1回、納入業者から検査結果を入手し確認する |
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物理的:硬質異物の存在 |
No |
生産者の不適切な取り扱により、骨等の硬質異物が存在する可能性があるが、異物除去工程で全品を目視確認することにより管理する |
参照:厚生労働省 食品製造におけるHACCPによる衛生管理普及のためのHACCPモデル例
まとめ

危害要因分析は、食品の安全性を確保するために危害要因を除去・低減させる、極めて重要な工程であるCCPを決定するうえで、不可欠な手順である。
手順1~5の事前準備で情報を整理し、それをもとに手順6で「ハザードを洗い出し管理手段を整理(1~4)」するからこそ、手順7のCCPの決定(5)を導き出すことが出来る。
参考文献
[1]公益社団法人日本食品衛生協会 危害要因分析とは
https://www.n-shokuei.jp/eisei/haccp_sec06.html
[2]一般財団法人食品産業センター HACCP
https://haccp.shokusan.or.jp/glossary/haccp/
[3]一般財団法人食品産業センター 第4部 HACCPに基づく衛生管理
https://haccp.shokusan.or.jp/wp-content/uploads/2018/06/e-tool-m-6.pdf
[4]厚生労働省 食品製造におけるHACCP入門のための手引書
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000098994.pdf
[5]厚生労働省 食品製造におけるHACCPによる衛生管理普及のためのHACCPモデル例