DIAASで見るたんぱく質の「質」|アミノ酸スコアだけでは見えない「消化・吸収されやすさ」

DIAASで見るたんぱく質の「質」|アミノ酸スコアだけでは見えない「消化・吸収されやすさ」

Protein hub編集部 編集部

アカデミア・研究
DIAASで見るたんぱく質の「質」|アミノ酸スコアだけでは見えない「消化・吸収されやすさ」

プロテインや高たんぱく食品を選ぶとき、多くの人がまず見るのは「たんぱく質が何g入っているか」です。栄養成分表示でも、たんぱく質量はエネルギー、脂質、炭水化物、食塩相当量と並ぶ基本項目です[6]。そのため、20g配合、30g配合といった数字は、生活者にも事業者にも分かりやすい訴求になります。

たんぱく質の「質」は量だけでは判断できない 

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ただ、たんぱく質は「量」だけで評価しきれない栄養素です。

たんぱく質は体内でアミノ酸に分解され、必要に応じて体の組織や酵素、ホルモンなどの材料として使われます。中でも、体内で十分に合成できず食事から取る必要があるアミノ酸を必須アミノ酸と呼びます。

必須アミノ酸は以下の9種類です:

  • ヒスチジン

  • イソロイシン

  • ロイシン

  • リシン

  • メチオニン

  • フェニルアラニン

  • トレオニン

  • トリプトファン

  • バリン

たんぱく質の質を考えるうえでは、これらがどの程度そろっているか、消化された後にどれだけ利用可能な形で届くかが論点になります[1]。

DIAASとは何か 

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この「量だけではない評価」に踏み込む指標が、DIAASです。DIAASは「Digestible Indispensable Amino Acid Score」の略で、日本語では「消化性必須アミノ酸スコア」と訳されます。名前の通り、食品中の必須アミノ酸が、消化性を考慮したうえで人の必要量の基準にどれだけ近いかを見る指標です[1]。

アミノ酸スコアとの違い 

DIAASの考え方は、アミノ酸スコアの発展形として理解すると分かりやすくなります。アミノ酸スコアは、食品に含まれる必須アミノ酸のバランスを、人が必要とするアミノ酸の基準パターンと比べる指標です。基準に対して最も不足しやすいアミノ酸を「第一制限アミノ酸」と呼び、そのアミノ酸が全体の評価を左右します。

例えば、ある食品にロイシンやバリンが多くても、リシンが基準に対して少なければ、その食品の評価はリシンに引っ張られます。アミノ酸スコアの基礎とあわせて理解すると、DIAASの位置づけはより分かりやすくなります。

一方で、アミノ酸スコアには限界があります。食品中にアミノ酸が含まれていることと、食べた後に体内で利用できることは同じではありません。消化されにくい構造を持つ原料、加工や加熱の影響を受けた原料、食物繊維や抗栄養因子の影響を受ける原料では、アミノ酸の「含有量」と「利用されやすさ」に差が出る可能性があります。そこで、アミノ酸の組成だけでなく、消化性も含めて評価する考え方が必要になります。

PDCAASとの違い 

DIAASの前に広く使われてきた代表的な指標が、PDCAASです。PDCAASは「Protein Digestibility Corrected Amino Acid Score」の略で、たんぱく質消化性補正アミノ酸スコアと訳されます。

1989年のFAO/WHO専門家会合で評価指標として推奨され、その後長く利用されてきました[1]。PDCAASは、アミノ酸スコアにたんぱく質全体の消化率を掛けて評価するため、アミノ酸スコアより一歩進んだ指標です。

ただし、PDCAASにも課題があります。FAOの2013年報告書では、PDCAASの限界として、たんぱく質全体の消化率を個々の必須アミノ酸の消化率として扱ってしまう点、消化率を主に大腸まで含めた全消化管で評価する点、さらに高品質なたんぱく質でもスコアを100で打ち切る点などが議論されています[1]。大腸では腸内細菌の働きなどによって窒素やアミノ酸関連成分の見え方が変わるため、小腸で実際に吸収されるアミノ酸量を反映しにくい場合があります。

DIAASはどのように計算されるのか 

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DIAASは、この課題に対応するために提案された指標です。FAOの2013年報告書では、DIAASは次の式で定義されています。

  • DIAAS(%)=100 ×[食品たんぱく質1g中の消化性必須アミノ酸量(mg)÷参照たんぱく質1g中の同じ必須アミノ酸量(mg)]

この計算を必須アミノ酸ごとに行い、最も低い値をその食品たんぱく質のDIAASとして扱います[1]。

…と説明されても、わかりにくいですよね。そこで、料理のレシピを連想してみてください。

  • 参照たんぱく質:ケーキ作りに必要な小麦粉の量(レシピ通りの100g)

  • 消化性必須アミノ酸(分子): 手元にある小麦粉のうち、ダマにならずに使えた量(80g)

  • 計算操作: レシピの100gに対して、ちゃんと使えたのは80g。つまり「レシピの必要量の80%を満たしている」

要するに、「体が求める理想の量(満点)に対して、消化され、吸収されると考えられる量は何パーセントか?」という達成率の計算です。 

DIAASは100を超えることもある

DIAASでは、PDCAASのようにスコアを100で打ち切らないため、100を超える値が示されることがあります。しかし、「100を超えた分だけ健康効果が高い」というわけではありません。参照パターンに対して、制限アミノ酸となる必須アミノ酸が必要量を上回っていることを示すのみです。そのため、DIAASの値は「効能の強さ」ではなく、たんぱく質源のアミノ酸バランスと消化性を評価するための指標として読む必要があります。

また、DIAASの数値は、原料単体の評価と最終商品の評価で同じとは限りません。たとえば、原料の加熱、乾燥、保管、他成分との組み合わせによって、アミノ酸の利用しやすさや消化性が変わる可能性があります。商品開発でDIAASを参考にする場合は、「この原料はDIAASが高い」と単純に見るだけでなく、最終的にどのような配合・加工・食べ方になるかまで含めて考える必要があります。

小腸の終わりで見る「回腸消化率」 

ポイントは、たんぱく質全体の平均的な消化率ではなく、個々の必須アミノ酸ごとの消化性を見ることです。また、DIAASでは、消化性は小腸の終わりにあたる回腸末端で評価することが望ましいとされています。

数字で見るDIAAS:乳たんぱくと植物性たんぱくの違い 

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数字で見ると、DIAASの特徴はより明確になります。2017年にBritish Journal of Nutritionで公表された研究では、9頭の成長期去勢雄豚を用い、以下のDIAASを比較しました[3]:

  • ホエイプロテインアイソレート(WPI)

  • ホエイプロテインコンセントレート(WPC)

  • 乳たんぱく濃縮物(MPC)

  • 脱脂粉乳(SMP)

  • エンドウたんぱく濃縮物(PPC)

  • 大豆たんぱく分離物(SPI)

  • 大豆粉

  • 全粒小麦

FAOは、可能であればヒトで測定した真の回腸消化率を使い、難しい場合は成長期の豚、次いで成長期のラットのデータを用いるという優先順位を示しています[1]。この研究は第一順位のヒト試験ではありませんでしたが、DIAASの計算で重視される回腸でのアミノ酸消化性を食品原料ごとに比較した点で参考になります。

DIAASの数値例 

同研究で、6か月から3歳の子どもの基準パターンを用いたDIAASは、WPIが100、WPCが107、MPCが120、脱脂粉乳が105でした。

一方、エンドウたんぱく濃縮物は62、大豆たんぱく分離物は84、大豆粉は89、全粒小麦は45でした[3]。

また、3歳以上、青少年、成人の基準パターンでは、WPIが125、WPCが133、MPCが141、脱脂粉乳が123、エンドウたんぱく濃縮物が73、大豆たんぱく分離物が98、大豆粉が105、全粒小麦が54と報告されています[3]。

数値を単純な優劣で見ない 

ここで注意したいのは、この数字を「動物性はよい、植物性は悪い」と単純化しないことです。DIAASは原料、加工条件、調理、測定方法、年齢別の参照パターンによって変わります。

植物性たんぱく質でも、大豆たんぱくのように比較的高い評価を示すものがあります。反対に、同じ植物性でも穀類ではリシンが制限アミノ酸になりやすく、豆類では含硫アミノ酸が制限になりやすいなど、原料ごとの特徴があります。

食品やプロテインを設計する場合は、単一原料の優劣ではなく、どのアミノ酸が不足しやすいかを見て組み合わせを考えることが現実的です。

生活者はDIAASをどう見ればよいか 

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生活者にとって、DIAASは「たんぱく質量の数字をどう読むか」を補助する視点になります。

例えば同じ20gのたんぱく質を含む商品でも、原料が

  • ホエイ中心なのか

  • 大豆中心なのか

  • エンドウや米などを組み合わせているのか

などによって、必須アミノ酸のバランスと消化性は変わります。

パッケージの栄養成分表示からDIAASまで読み取れる商品は多くありませんが、原材料名やたんぱく質源の種類を見ることで、グラム数だけの比較よりも一段深く選びやすくなります。

プロテイン選びではDIAASだけを基準にしない 

プロテイン選びでは、DIAASだけを基準にする必要はありません。味、価格、アレルゲン、乳糖への耐性、食習慣、摂取タイミング、1日の食事全体でのたんぱく質量も関係するからです。

日本人の食事摂取基準(2025年版)のたんぱく質に関する章では、19歳以上のたんぱく質維持必要量の基礎値として0.66g/kg体重/日が扱われています[2]。DIAASは、このような必要量の考え方を置き換えるものではなく、摂取するたんぱく質の中身をより細かく見るための指標です。

事業者にとってのDIAASの活用ポイント 

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事業者にとっては、DIAASは商品設計や品質コミュニケーションの材料になります。

原料の質を説明する材料になる 

高たんぱく食品の市場では、「何g入っているか」の訴求が先行しやすい一方で、原料の質をどう説明するかが差別化の課題になります。ホエイ、カゼイン、大豆、エンドウ、米、酵母、藻類、昆虫由来など、たんぱく質源が多様化するほど、含有量表示だけでは商品の栄養設計を伝えきれません。

その点、DIAASは必須アミノ酸の充足と消化性を同時に説明できるため、研究開発、原料選定、処方設計などで使いやすい指標です。

植物性プロテインでは原料の組み合わせが鍵になる 

特に植物性プロテインやプラントベース食品では、DIAASの考え方が役に立ちます。植物性原料は、環境配慮や食習慣への適合という価値を持つ一方、アミノ酸組成や消化性にばらつきがあります。

そこで、ある原料でリシンが不足しやすい場合は豆類を組み合わせる、含硫アミノ酸が課題になる場合は別の原料で補う、といった設計が考えられます。2022年のレビューでは、たんぱく質の質を食事全体で考える際、「異なるたんぱく質源の補完は重要だが、必須アミノ酸は体内で長期間貯蔵できないため、食事単位での組み合わせとして見る必要がある」とされています[4]。

DIAASを使うときの注意点 

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ただし、DIAASを販売表現に使う場合には慎重さが必要です。

表示・広告表現では健康効果と結びつけない 

DIAASが高いことは、その食品のたんぱく質源が必須アミノ酸の面で評価しやすいことを示しますが、特定の健康効果を保証するものではありません。そのため、「このプロテインを飲めば筋肉がつく」「健康状態が改善する」といった表現にはつなげられません。

また、製品が通常食品なのか、機能性表示食品なのか、栄養機能食品なのかによっても表示・広告で利用できる言葉の範囲は異なります。

DIAASはあくまで栄養学上の評価指標なので、表示制度上の訴求に使う場合は食品表示基準や広告表現の確認が必要です。

DIAASにもデータ上の限界がある

また、DIAASは万能な指標ではありません。

  • ヒトで得られた消化性データはまだ十分ではなく、多くのデータは豚モデルなどに依存していることが指摘されています[5]。

  • 加えて、FAOとIAEAは、ヒトが食べる食品中のたんぱく質・アミノ酸の回腸消化性データベース構築やデータ整備は現在も進行中のテーマです[7]。

そのため、DIAASを見るときは「最新で専門的な指標だから正解」と受け止めるより、「たんぱく質の量だけでは見えない部分を補う指標」と捉えるのが適切です。

たんぱく質源の比較、植物性原料の組み合わせ、乳たんぱく質の特徴説明、研究開発段階での品質評価には有用です。一方、生活者向けなら、専門用語を前面に出すより「同じたんぱく質量でも必須アミノ酸のバランスや消化されやすさには違いがある」と説明する方が伝わりやすいでしょう。

DIAASはたんぱく質を一段深く見るための指標

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DIAASは、プロテインや高たんぱく食品を一段深く見るための指標です。従来のアミノ酸スコアが「必須アミノ酸がどれだけそろっているか」を見る指標だとすれば、DIAASは「消化された後に、必須アミノ酸としてどれだけ届くか」まで含めて評価しようとする指標です。グラム数、原料、アミノ酸バランス、消化性を分けて考えることで、消費者は商品を選びやすくなり、事業者は商品設計の根拠を説明しやすくなります。

参考文献

[1] FAO. Dietary protein quality evaluation in human nutrition: Report of an FAO Expert Consultation. 2013.
URL:https://www.fao.org/ag/humannutrition/35978-02317b979a686a57aa4593304ffc17f06.pdf
確認日:2026年5月22日

[2] 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版)「たんぱく質の食事摂取基準」.
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316462.pdf
確認日:2026年5月22日

[3] Mathai JK, Liu Y, Stein HH. Values for digestible indispensable amino acid scores (DIAAS) for some dairy and plant proteins may better describe protein quality than values calculated using the concept for protein digestibility-corrected amino acid scores (PDCAAS). British Journal of Nutrition. 2017.
URL:https://www.cambridge.org/core/journals/british-journal-of-nutrition/article/values-for-digestible-indispensable-amino-acid-scores-diaas-for-some-dairy-and-plant-proteins-may-better-describe-protein-quality-than-values-calculated-using-the-concept-for-protein-digestibilitycorrected-amino-acid-scores-pdcaas/E7AE34F8A5BCEA5A9FBFBC72E72B93DF
確認日:2026年5月22日

[4] Adhikari S, Schop M, de Boer IJM, Huppertz T. Protein Quality in Perspective: A Review of Protein Quality Metrics and Their Applications. Nutrients. 2022.
URL:https://www.mdpi.com/2072-6643/14/5/947
確認日:2026年5月22日

[5] Xipsiti M. Protein quality evaluation: FAO perspective. Frontiers in Nutrition. 2024.
URL:https://www.frontiersin.org/journals/nutrition/articles/10.3389/fnut.2024.1446879/full
確認日:2026年5月22日

[6] 消費者庁. 栄養成分表示について.
URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/nutrient_declearation/
確認日:2026年5月22日

[7] FAO and IAEA. Construction of a database on ileal digestibility of protein and amino acids in foods consumed by humans. Report of a joint FAO/IAEA meeting. 2025.
URL:https://openknowledge.fao.org/handle/20.500.14283/cd7053en
 確認日:2026年5月22日