空気からプロテインは作れるのか?微生物発酵で広がる次世代たんぱく質

空気からプロテインは作れるのか?微生物発酵で広がる次世代たんぱく質

Protein hub編集部 編集部

コラム・トレンド
空気からプロテインは作れるのか?微生物発酵で広がる次世代たんぱく質

「空気からプロテイン」と聞くと、空中からそのままたんぱく質が生まれるように感じるかもしれません。実際には、空気中の二酸化炭素(CO2)や、水から作る水素、酸素、窒素源などを使い、微生物をバイオリアクター(発酵・培養に使う密閉設備)で育てる技術です[1][4]。

つまり「空気だけで作る」というより、CO2などを原料の一部として使い、微生物の力でたんぱく質を含む素材を作る仕組みです。畑や牧場だけに頼らないたんぱく質生産として、食品業界でも注目されています。

空気由来プロテインとは何か

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空気由来プロテインは、「微生物たんぱく質」や「ガス発酵」に近い考え方です。代表的な例として、水素酸化細菌などの微生物を使う方法があります。これらの微生物は、水素をエネルギー源、CO2を炭素源として利用し、酸素や窒素源などを取り込みながら増殖します[1]。

増えた微生物の細胞にはたんぱく質が含まれるため、乾燥・加工することで食品原料として使う研究や事業化が進められています。

フィンランドのSolar Foodsが開発する「Solein」も、その代表例の一つです。同社は、Soleinの乾燥重量あたりの標準値として、たんぱく質78%、脂質6%、炭水化物2%、食物繊維10%、ミネラル4%を公表しています[2]。

なぜ注目されるのか・なぜ重要か 

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注目される理由の一つは、たんぱく質生産を農地や気候条件への依存から一部切り離せる可能性があるためです。従来の農業や畜産では、耕作地、水資源、気温、干ばつ、草地の状態、飼料生産などが供給上の制約になり得ます。

IPCCも、温暖化が作物や草地の品質、収穫の安定性に影響していることや、畜産の水需要・水資源への影響を整理しています[6]。

一方、水素酸化細菌などを使う微生物たんぱく質では、CO2源、水の電気分解、バイオリアクター、乾燥工程などを組み合わせ、管理された生産システムで微生物を培養します[4]。条件が整えば、天候の影響を受けにくく、地域や季節に左右されにくい供給手段になり得ると考えられます[4]。

事業面では、プロテインバー、飲料、代替乳製品、麺、パンなどへの応用が想定されます。

Solar Foodsは、Soleinが2022年9月にシンガポール食品庁から同素材として初めて新規食品承認を受け、同施設の最大生産量は年160トンとされています[3]。まだ一般的な原料とは言いにくいものの、研究段階から商業化へ進み始めた素材といえます。

注意点:空気由来でも「万能」ではない

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空気由来プロテインは、環境配慮型の素材として語られやすい一方で、評価は条件によって変わります。使用する電力の種類、CO2の由来、バイオリアクターの効率、乾燥工程などによって、環境負荷は大きく変動します。

ライフサイクル評価の研究でも、電力源や電気からバイオマスへの変換効率が、持続可能性に大きく影響するとされています[4]。

また、食品として販売するには、国や地域ごとの規制確認が欠かせません。シンガポール食品庁は、新規食品について、販売前承認や安全性評価を求める枠組みを示しています[5]。日本、EU、米国などで扱う場合も、それぞれの制度に沿った確認が必要です。

生活者にとっては、味、価格、アレルゲン、原材料表示、食べ慣れやすさも判断材料になります。事業者にとっては、安全性評価、表示、安定供給、消費者への説明設計まで含めて検討する必要があります。

空気由来プロテインは、たんぱく質の選択肢を広げる技術

空気からプロテインは作れるのか。正確には、「空気中のCO2などを使い、微生物発酵によってたんぱく質素材を作ることは可能」です。ただし、空気だけで完結するわけではなく、電力、水素、酸素、窒素源、設備、安全性評価が必要です。

生活者にとっては、ホエイ、大豆、エンドウに続く新しいたんぱく質原料の一つとして見ると理解しやすいでしょう。事業者にとっては、原料調達、サステナビリティ、商品差別化を考えるうえで、今後も動向を追う価値のある次世代素材です。

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参考文献

[1] Angenent SC, Schuttinga JH, van Efferen MFH, Kuizenga B, van Bree B, van der Krieken RO, Verhoeven TJ, Wijffels RH. Hydrogen Oxidizing Bacteria as Novel Protein Source for Human Consumption: An Overview. The Open Microbiology Journal. 2022.

URL:https://openmicrobiologyjournal.com/VOLUME/16/ELOCATOR/e187428582207270/FULLTEXT/

確認日:2026年6月15日

[2] Solar Foods. What is Solein’s nutritional composition? Solar Foods Q&A.

URL:https://solarfoods.com/qa/what-is-soleins-nutritional-composition/

確認日:2026年6月15日

[3] Solar Foods. What is the status of the company’s operations right now, and when do you expect we can see Solein on the market? Solar Foods Q&A.

URL:https://solarfoods.com/qa/what-is-the-status-of-the-companys-operations-right-now-and-when-do-you-expect-we-can-see-solein-on-the-market/

確認日:2026年6月15日

[4] Sillman J, Uusitalo V, et al. A life cycle environmental sustainability analysis of microbial protein production via power-to-food approaches. The International Journal of Life Cycle Assessment. 2020.

URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s11367-020-01771-3

確認日:2026年6月15日

[5] Singapore Food Agency. Overview of Pre-Market Approval Framework for Novel Food.

URL:https://www.sfa.gov.sg/regulatory-standards-frameworks-guidelines/novel-food-framework/overview-of-pre-market-approval-framework-for-novel-food

確認日:2026年6月15日

[6] IPCC. Climate Change 2022: Impacts, Adaptation and Vulnerability. Chapter 5: Food, Fibre and Other Ecosystem Products. 2022.

URL:https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg2/chapter/chapter-5/

確認日:2026年6月15日